Brain Lang. 2009 Oct;111(1):20-35. doi: 10.1016/j.bandl.2009.07.007. Epub 2009 Aug 19.
Overt naming fMRI pre- and post-TMS: Two nonfluent aphasia patients, with and without improved naming post-TMS.
Martin PI1, Naeser MA, Ho M, Doron KW, Kurland J, Kaplan J, Wang Y, Nicholas M, Baker EH, Alonso M, Fregni F, Pascual-Leone A.
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Abstract
日本語抄録
経頭蓋磁気刺激を用いた呼称機能の改善を目的として、2名の非流暢性失語患者の呼称中の脳賦活を、磁気刺激前後に機能的MRIを用いて撮像を行なった。被験者は、10回の1Hzの磁気刺激を右pars triangularisの一部の機能を抑制するために行なった。患者1は、磁気刺激により呼称と単語数の長さで改善が見られた。患者2は、磁気刺激による呼称の改善が認められなかった。
TMSの効果を認めた患者1(発症後10年)では、磁気刺激前、両側の一次運動感覚野、右IFG、両側SMAが呼称中(28%正答率)に有意な賦活を認めた。3ヶ月後、患者1では、呼称中(42%正答率)に引き続き両側一次運動感覚野、右IFG、両側SMAに有意な賦活を認めた。16ヶ月後の呼称中(58%正答率)には、同様に両側一次運動感覚野と右IFGに有意な賦活を認め、左SMAの活動上昇は、TMS前(p<0.02)、TMS3ヶ月後(p<0.05)と比較して有意な差を認めた。また、TMS16ヶ月後において、左SMAは、右SMAに比べて大きな賦活を認めた(p<0.08)。TMS48ヶ月後(42%正答率)、この左半球の賦活優位性は変わらず認められた。患者1では、ボストン呼称課題で磁気刺激前11個の呼称から磁気刺激後(2〜43ヶ月後)に14〜18個の呼称が可能となった。彼の最も長いフレーズの長さは、磁気刺激後3語から5〜6語へ改善が見られた。
一方TMSのの効果が認められなかった患者2(発症後1.5年)では、呼称中(3%正答率)に右IFGに有意な賦活を認めた。TMS3ヶ月後、6ヶ月後では、右IFGの有意な賦活は認められなかったが、右一次運動感覚野に有意な賦活を認めた。患者2は、全fMRIスキャンで両側SMAの有意な賦活を認めた。さらに、セッション間で新しく、継続した損傷領域周囲の賦活は認められず、全体を通して呼称中の賦活パターンはほとんど変化を認めなかった。患者2の呼称の成績は、TMS前、3ヶ月後、6ヶ月後で、1,2個の呼称しかできなかった。また、ベントン呼称課題の成績もほとんど変化しなかった。患者2の損傷領域がこのような結果を引き起こしていると考えられる。損傷領域は、左運動野、運動前野からvertexまで損傷が広がっており、左SMA周辺では白質を含む深層部分にまで損傷が伸びていた。患者2は、また呼称に重要な働きをしていることが知られている左中前頭回も損傷を受けいた。一方、患者1ではこの領域には損傷はなかった。さらに、患者2では、患者1には見られないウェルニッケ領野の下部、後方部(BA21、37野を含む)にも損傷をうけていた。これらの結果より、TMSによる呼称機能改善は、左半球言語ネットワークの回復が、部分的ではあるが非流暢性失語の呼称機能やフレーズの長さの回復につながっていることがわかる。