Neurocase. 2014 Aug;20(4):407-20.
Abstract
One
of the current challenges in the field of advanced prosthetics is the
development of artificial limbs that provide the user with detailed
sensory feedback. Sensory feedback from our limbs is not only important
for proprioceptive awareness and motor control, but also essential for
providing us with a feeling of ownership or simply put, the sensation
that our limbs actually belong to ourselves. The strong link between
sensory feedback and ownership has been repeatedly demonstrated with the
so-called rubber hand illusion (RHI), during which individuals are induced with the illusory sensation that an artificial hand
is their own. In healthy participants, this occurs via integration of
visual and tactile signals, which is primarily supported by multisensory
regions in premotor and intraparietal cortices. Here, we describe a
functional magnetic resonance imaging (fMRI) study with two upper limb
amputees, showing for the first time that the same brain regions
underlie ownership sensations of an artificial hand
in this population. Albeit preliminary, these findings are interesting
from both a theoretical as well as a clinical point of view. From a
theoretical perspective, they imply that even years after the
amputation, a few seconds of synchronous visuotactile stimulation are
sufficient to activate hand-centered
multisensory integration mechanisms. From a clinical perspective, they
show that a very basic sensation of touch from an artificial hand
can be obtained by simple but precisely targeted stimulation of the
stump, and suggest that a similar mechanism implemented in prosthetic
hands would greatly facilitate ownership sensations and in turn,
acceptance of the prosthesis.
(日本語訳)
最先端義肢装具の分野において重要な試みの一つとして挙げられるのは、使用者に詳細な感覚フィードバック情報を提供できる人工四肢の開発である。四肢からの感覚フィードバック情報は、自己受容意識や運動制御のみならず、身体所有感や自己の身体が自分のものであるという感覚を生じさせることにも重要である。感覚フィードバック情報と身体所有感が非常に強く関連していることは、いわゆるゴムの手錯覚と呼ばれる錯覚、人工の手をまるで自己の手のように感じる錯覚において繰り返し示されてきた。健常者において、このような錯覚は、主に運動前野や頭頂間溝領域において行われる視覚情報と触覚情報との統合により生じる。そこで、本研究では、fMRIを用いて、二人の上肢切断患者においてはじめて人工手の身体所有感を司る脳領域を明らかにした。予備的なデータではあるが、これらのデータは、理論的な視点と臨床的な視点の両者にとって役に立つデータとなるだろう。理論的な視点からは、四肢切断後数年経過するにもかかわらず、数秒間の視覚・触覚刺激が手中心の多感覚統合メカニズムを十分賦活させることである。臨床的な視点からは、人工手から生じていると感じる感覚が、四肢切断端への刺激により得られることを示し、義手を用いているときに生じるのと同様のメカニズムが、身体所有感を増強させ、さらにそのことが、義手の受容と繋がることが示唆された。
(すこし感想)
スウェーデンのカロリンスカ研究所のHenrik Ehrssonらのグループの研究。彼らはすでに健常者におけるゴムの手錯覚時の脳賦活を計測し、その神経基盤を同定しており、運動前野と頭頂葉領域が重要な領域であると報告している。そして、今度は、四肢切断患者において、ゴムの手錯覚中の脳活動を計測することで、義肢が自己の手のように感じる感覚が、健常者で生じるゴムの手錯覚を生じさせる神経メカニズムと同じであるかを調べた研究。四肢切断患者で、ゴムの手錯覚を生じさせるためには、一つ工夫が必要となる。それは、切断端分の一部に、触ると幻肢が触れられたと感じる部位があり、その部位へのブラシによる触覚刺激を与えることである。この刺激により、四肢切断者は、まるで幻肢が触られているような感覚(referred sensation)が生じて、ゴムの手錯覚が可能となる。これにより、四肢切断者がゴムの手錯覚を生じている時に賦活する神経メカニズムは、健常者と同様の運動前野と頭頂葉領域の賦活が見られていた。まあ、このことから、referred sensationは、幻肢の感覚として処理されているってことになり、今後の幻肢痛の介入とかにも色々応用がききそうだなあ。
(日本語訳)
最先端義肢装具の分野において重要な試みの一つとして挙げられるのは、使用者に詳細な感覚フィードバック情報を提供できる人工四肢の開発である。四肢からの感覚フィードバック情報は、自己受容意識や運動制御のみならず、身体所有感や自己の身体が自分のものであるという感覚を生じさせることにも重要である。感覚フィードバック情報と身体所有感が非常に強く関連していることは、いわゆるゴムの手錯覚と呼ばれる錯覚、人工の手をまるで自己の手のように感じる錯覚において繰り返し示されてきた。健常者において、このような錯覚は、主に運動前野や頭頂間溝領域において行われる視覚情報と触覚情報との統合により生じる。そこで、本研究では、fMRIを用いて、二人の上肢切断患者においてはじめて人工手の身体所有感を司る脳領域を明らかにした。予備的なデータではあるが、これらのデータは、理論的な視点と臨床的な視点の両者にとって役に立つデータとなるだろう。理論的な視点からは、四肢切断後数年経過するにもかかわらず、数秒間の視覚・触覚刺激が手中心の多感覚統合メカニズムを十分賦活させることである。臨床的な視点からは、人工手から生じていると感じる感覚が、四肢切断端への刺激により得られることを示し、義手を用いているときに生じるのと同様のメカニズムが、身体所有感を増強させ、さらにそのことが、義手の受容と繋がることが示唆された。
(すこし感想)
スウェーデンのカロリンスカ研究所のHenrik Ehrssonらのグループの研究。彼らはすでに健常者におけるゴムの手錯覚時の脳賦活を計測し、その神経基盤を同定しており、運動前野と頭頂葉領域が重要な領域であると報告している。そして、今度は、四肢切断患者において、ゴムの手錯覚中の脳活動を計測することで、義肢が自己の手のように感じる感覚が、健常者で生じるゴムの手錯覚を生じさせる神経メカニズムと同じであるかを調べた研究。四肢切断患者で、ゴムの手錯覚を生じさせるためには、一つ工夫が必要となる。それは、切断端分の一部に、触ると幻肢が触れられたと感じる部位があり、その部位へのブラシによる触覚刺激を与えることである。この刺激により、四肢切断者は、まるで幻肢が触られているような感覚(referred sensation)が生じて、ゴムの手錯覚が可能となる。これにより、四肢切断者がゴムの手錯覚を生じている時に賦活する神経メカニズムは、健常者と同様の運動前野と頭頂葉領域の賦活が見られていた。まあ、このことから、referred sensationは、幻肢の感覚として処理されているってことになり、今後の幻肢痛の介入とかにも色々応用がききそうだなあ。